路面電車
2026.03.19
小さいころに乗った路面電車には、ほかの乗り物にはない不思議な“ドキドキ”があった。
車体に染みついた独特のにおい。ゆっくり横揺れしながら進む感覚。
運転席から聞こえるレバーの操作音。そして向かい合わせの座席がつくる、あの独特の距離感。
今の交通機関ではなかなか味わえない、生活の匂いがそのまま残った空間だった。
スピードよりも、乗り合わせた人たちの気配が優先されるような世界。
ご年配の方がふらつけば、誰かが自然と手を伸ばす。
席を譲るのも、どこか「そういうものだよね」という空気があって、
車内全体がひとつの家族みたいにまとまっていた。
路面電車は、人によって“移動手段”にも“記憶の乗り物”にもなる不思議な存在だ。
Yo-oY